物件を売却する際にかかる費用のひとつに消費税があります。消費税はすべての売却物件にかかるわけではなく、また、課税対象になる費用とならない費用があるなど不動産取引の初心者にはわかりにくくなっています。そこで、売却時に必要となる消費税の課税対象の条件とともに、事前に把握しておきたい具体的な消費税額の算出方法について解説します。
すべてに課税されるわけではない!消費税がかかる物件や費用とは?
消費税がいくらかかるかを知る前に、まず自分が売却したい物件にそもそも消費税がかかるのかを知っておくことは必須でしょう。消費税とは、物を売ったりサービスを提供したりした際に課される税金です。支払われた消費税のうち、一部は国税として、一部は地方税として納められます。
そして、消費税を課税しなければいけない取引の条件は次の3つの条件をすべて満たしているものです。条件の1つ目は日本国内での取引であること、2つ目は事業者が事業として対価を得る取引であることとなっています。さらに、3つ目として資産の譲渡や貸付をしたり、サービスの提供を行ったりする取引(消費)であることも条件です。その名のとおり、消費することで税金が課税されるのが消費税となっています。
この消費税の基本的な仕組みを踏まえたうえで、次は不動産の売却取引における消費税の課税対象について説明しましょう。まず、課税対象となるかどうかは、物件の売却を誰が行うかがポイントとなります。原則、事業者が行う取引であれば課税対象となりますが、個人による取引なら非課税対象です。このため、たとえば不動産会社で取り扱っている物件を売った場合には消費税がかかります。しかし、会社員が個人的に中古住宅を売った場合であれば、事業者による売却ではないため非課税です。
ただし、個人による売却であっても、事業として対価を得る取引であれば課税対象となるため注意しましょう。たとえば、会社員が個人で物件を売るようなケースでも、居住用の物件ではなく、テナントや投資用の物件などを売却する場合には消費税を納めなければいけません。消費税は、基本的には法人が売却取引をした際にかかるものとされていますが、法人であっても個人であっても、事業として使用していた物件を売った場合には消費税の課税対象となります。
さらに、事業として売却する不動産の中にも非課税となるものもあります。それが土地です。消費税は消費されることではじめて税金が課されます。不動産では、土地は消費されるものではないという扱いになっているため、個人でも法人でも土地の売却では課税されないことが通常です。このため、戸建て物件を売却したら、家に対しては消費税が課されますが、土地については消費税が課されることはありません。
一方、マンションの場合、土地に関する扱いが戸建てとは異なります。所有権を持っている物件であっても土地は共有持ち分であるため、個人が土地の売却に関して直接権利を行使することはできません。しかし、共有の持ち物でも敷地の利用権はあり、この利用権が課税の対象物となります。ただし、戸建て物件の土地と同様に土地の利用権も使用することで消費されるものではないため、非課税です。
また、売却したいと考えている建物が建っている場所が所有権のある土地ではなく、借地権の土地に建てられているケースもあります。このため、事業として借地権の土地に建つ物件を売りたい場合、消費税は課されるのかという点も気になるポイントでしょう。所有権が土地を所有する権利を意味するのに対して、借地権は土地を自分のものとせずに他人から借りている権利状態をいいます。
また、借地権には地上権と賃借権の2種類があり、実質上はあいまいとなってきてはいるものの、正確には異なった法律のルールがあります。正しくいえば、地上権は地主の承諾を得なくても第三者に賃貸したり地上権を譲渡したりすることが可能です。対して、賃借権は土地を利用することだけが認められている権利となっていて、譲渡や第三者への賃借などを地主の承諾なしに行うことはできません。承諾なしに売却すれば契約違反となって賃貸借契約が解除されることもあります。そして、譲渡や賃借をしたい場合には、地主に承諾を得たうえで、さらに、承諾料の支払いが必要となるのです。
このようなことを踏まえて必要な手続きを済ませたうえで借地権の土地に建つ物件を売却する場合、消費税はかかりません。土地の譲渡や貸付けは非課税対象となる取引とされていて、土地には借地権付きの土地の上に存在する権利も含まれているからです。ただし、1カ月未満の土地の貸付や、駐車場などの施設の利用に伴いそのまま土地が使用される場合には、課税対象となるため注意しましょう。
加えて、物件売却において知っておきたいポイントがもうひとつあります。消費税の免税事業者制度です。免税事業者制度とは、個人事業者であれば前々年、法人であれば前々事業年度において課税売上高が1000万円以下であると消費税の納税義務が免除される制度をいいます。課税売上高が1000万円以下であるなど制度の条件に該当していれば、事業用の物件の建物を売ったりしても消費税を支払う必要はありません。
どのくらいかかるのか把握しておきたい!消費税額はいくらになる?
不動産売買において消費税がかけられるのは、売主や業者です。そして、売却することで消費税がかかるものには大きく2つの種類があります。まず、1つ目が先述した条件にあてはまる売却物件の価格です。土地は原則非課税であるため、消費税がかかるのは建物のみとなります。たとえば、土地が2000万円、建物が3000万円の物件を売却する場合、土地にかかる消費税は0円です。しかし、建物については建物価格2000万円×消費税率8%=160万円が消費税として課されます。消費税を納めるときには、物件の価格と支払うべき消費税分を一緒に支払うことが通常です。そして、広告などに売却物件情報を出す際には物件にかかる消費税を売却価格に含めて表示しなければいけません。「不動産の表示に関する公正競争規約」で不動産価格は消費税などの額を含んで表示することが定められているため注意しましょう。
そして、もう1つ消費税が課されるのが売却に関わる諸費用です。物件を売る際に不動産会社を利用した場合には、仲介手数料が必要となります。仲介手数料は宅地建物取引業法で報酬額の上限が決められていますが、400万円以上で売却した場合であれば、売買価格×3%+6万円で算出します。たとえば、3000万円の物件の取引であれば、3000万円×3%+6万円=96万円が仲介手数料です。ただし、この金額にさらに消費税がかかることを知っておきましょう。さらに、仲介手数料の算出で気を付けておきたい点が計算する際に使用する物件価格です。原則不動産価格は税込み表示となっていますが、計算する際には税抜きの物件価格に対して報酬額を算出することとなっています。
また、売却する際には所有権を買主に移す手続きが必要です。所有権移転登記にかかる登記費用は買主の負担となりますが、売却する物件に住宅ローンなどが残っている場合には抵当権抹消登記が諸費用として必要となるため、売主側にも負担がかかります。抵当権抹消登記にかかる費用には、登録免許税と司法書士への報酬、印紙代などの手続きをするために使用した実費などが含まれます。登録免許税は売却する物件ひとつに付き1000円です。司法書士への報酬や実費は依頼する事務所や手続き内容などによっても異なりますが、報酬は1万円前後、実費は5000円くらいが目安となります。このため、抵当権抹消登記としては消費税も含めて2~3万円くらいを用意することが通常です。
諸費用としてはほかにも、金融機関に支払う手数料が必要となることもあります。売却物件を購入したときに融資を受けていて、売却する時点でまだ残債がある場合には、売却益で残債を一括繰り上げして返済することが通常です。この手続きをする際にかかる一括繰り上げ返済手数料にも消費税は課されるため注意しましょう。手数料の金額は金融機関ごとに異なりますが、4000円前後であることが一般的です。固定金利のローンであれば、4万円前後が目安となります。